8月5日、6日と1泊2日で山陰地方、島根県松江市議会と鳥取県鳥取市議会へ議会改革についての管外視察。以前の総務委員会での視察と同様、バスの旅になります。
〇1日目:島根県松江市
新庁舎が5月にグランドオープンしたところとのことで最新の庁舎に触れる。宍道湖に面した最高のロケーションのためオープンデッキが各回に設けられており、観光都市に存在する庁舎だなぁと感心しました。
| 松江市 | 人口(R8/6/30) | 191,586人 | 面積 | 572.96㎢ |
産業別 | 第1次 3.3% | 第2次 17.9% | 第3次 76.1% | 分類不能 2.7% |
就業人口 | 97,465人 | ※産業別、就業人口はR2国勢調査時 |
豊岡市 | 人口(R8/6/30) | 72,899人 | 面積 | 697.55㎢ |
産業別 | 第1次 5.6% | 第2次 26.6% | 第3次 66.5% | 分類不能 1.3% |
就業人口 | 39,194人 | |
松江市は、2026年6月末時点の人口は19万1,586人(合併当初の20万人超から微減傾向)。面積は572.96 km²と広大な土地です。
島根半島・宍道湖中海ジオパークを擁する自然豊かな「水の都」ですか、宍道湖・中海は汽水湖のため飲料水には使えないとのこと。出雲そば発祥地であり、名菓「若草」など金沢や京都と並ぶ和菓子の名所としても有名です。
平成17年の合併から20周年、松江城国宝指定10周年を迎え、2026年5月には新庁舎がグランドオープンしました。また、NHK朝の連続テレビ小説『ばけばけ』のモデルである小泉八雲夫妻ゆかりの地であり、庁舎1階にはドラマのセットを再現した無料のドラマ館が設けられています。今年2026年11月には「全国市議会議長会」が松江市で開催されます。

〇視察テーマ:「議会改革全般」「災害発生時の対応」「政策提言」および新庁舎のユニバーサルデザイン設備について
〇議会改革の取り組み:
議員体制: 議員定数は現在31名(令和6年に34名から削減)。議員全体の約3分の2が2期目までの期数の若い議員で構成。
基本条例と広報: 平成20年に「議会基本条例」を制定。平成21年には独立した「議会だより」を発行開始し、記事執筆や写真撮影などの編集実務はすべて議員自身が実施。
広聴活動: 平成22年から市内29の公民館すべてを回る「議会報告会」を開始し、現在は常任委員会単位で関連団体を招く意見交換会へ移行。
ICTの推進: 令和5・6年の新庁舎整備に伴い、ペーパーレス化のためのタブレット端末や電子採決システムを導入しました。また、令和8年6月には「育児」「介護」「大規模災害」「感染症」の事由に限定し、委員会へオンライン参加できる条例改正を実施。
災害時対応(BCP):平成26年の広島土砂災害を契機に、平成27年に「災害発生時の対応要領」および「議員用行動マニュアル」を策定。
災害発生時に安否確認と被災情報を集約するため、議会独自の「市議会災害対策支援本部」を立ち上げる体制を確立。2026年1月に東部で震度5の地震が発生した際には、このマニュアルに基づき、ビジネスチャットツール「LINE Works」と電話を併用して、迅速な全議員の安否確認と連絡体制を確立。
ユニバーサルデザイン(新庁舎):新庁舎建設にあたり、平成30年の基本計画策定時からユニバーサルデザインをコンセプトに掲げ、防音の「親子傍聴席」を整備(年間4〜6回ほどの利用実績)。また、難聴者向けの「ヒアリングループ補聴システム」も設計段階から導入。
議事運営の効率化(一般質問の持ち時間制):定数31名と人数が多い議会である中、一般質問には「年間80分」の持ち時間制(グループまたは個人単位)を採用。限られた会期の中で効率よく、かつ緊密な議事運営を行うためのシステムが構築されている。
【実効性の高いBCPとハード・ソフトの融合】
有事の際、行政(執行部)から議員への情報提供はどうしても後回しになりがちであるという実態を踏まえ、議会側に情報が一元化された窓口(議会災害支援本部)を明確に設ける意義を定義している点は極めて現実的。平時から「LINE Works」等を用いた訓練を行い、実際の震度5の地震の際にも機能させた実績は、豊岡市議会が現在策定を進めているBCPの運用においてモデルとなる。新庁舎建設という契機を活かし、設計の素案段階から親子傍聴席やヒアリングループを組み込んだプロセスは、住民に寄り添う開かれた議会の象徴として高く評価できる。
【今後の課題】
改選によって議員が大幅に入れ替わったため、議会基本条例の評価・検証作業が遅れ気味になっている実態。若手議員への条例理念の浸透やコンプライアンス研修(今季の議会研修会テーマ)の継続が必要。
議会だよりを議員の手のみで編集しているため、閉会から発行まで約2ヶ月以上(例えば2月議会が6月発行になるなど)のタイムラグが生じ、情報の鮮度が低下している点が慢性的な課題と指摘されている
-所感-
新人向けの勉強会は議会研修会で対応しているとのことで、私がしているような勉強会については各会派でされているはずとのこと。この点は足りていないだろうと思えましたが、議会基本条例の評価検証作業を行っている点は見習うべきだと。また議会広報のあり方はもう少し検討の余地がありそうです。年間80分の持ち時間制はかなり目から鱗でした。
恒例の朝散歩は、ホテルから見える県立美術館へ。夏休み時期の早朝なのでラジオ体操がどこかでやっていないかなぁと思いながら美術館にたどり着くとビンゴ!それらしい集団が。子どもの姿はありませんでしたが、馴染みあるオールドメンバーで安心感がありました。
〇2日目:鳥取県鳥取市
| 鳥取市 | 人口(R8/7/1) | 177,623人 | 面積 | 765.31㎢ |
産業別 | 第1次 4.7% | 第2次 20.2% | 第3次 72.8% | 分類不能 2.3% |
就業人口 | 89,928人 | ※産業別、就業人口はR2国勢調査時 |
豊岡市 | 人口(R8/6/30) | 72,899人 | 面積 | 697.55㎢ |
産業別 | 第1次 5.6% | 第2次 26.6% | 第3次 66.5% | 分類不能 1.3% |
就業人口 | 39,194人 | |
鳥取市は、兵庫県新温泉町や香美町などの但馬地域と隣接しており、豊岡市や但馬住民が買い物や食事などで頻繁に訪れる非常に親近感の強い地域です。「麒麟のまち」広域連携や、消防・防災での連携(東部広域行政管理組合)を通じて市民の安全を守る協調体制をとっています。
新幹線が通っていないことから「陸の孤島」と呼ばれる共通の交通課題を抱えており、近隣県と協調して「山陰近畿自動車道」の全線開通(未整備区間の解消)を早期に進めることが広域連携における最重要課題となっています。
視察時には39度から40度に達する記録的な酷暑を観測しました。
〇視察テーマ:「障害者に配慮した議会中継(手話通訳およびAI字幕表示)」について
導入の経緯:令和元年の新庁舎移転に伴い、車椅子用スロープやスペース、親子傍聴席など議場のバリアフリー化を推進し、あらかじめ手話中継カメラの設置スペースを確保。
令和2〜3年にかけて、身体障害者福祉連合会や聴覚障害者団体から手話通訳と字幕付きのテレビ中継を求める要望書が提出。
議会改革検討委員会(9名)で10回に及ぶ協議を実施し、令和4年の2回の試行(アンケートやヒアリングを含む)を経て、好反応を得たことから令和4年9月定例会から本格的に導入。
手話通訳: 本会議中継時、ケーブルテレビ(地上波)およびネット配信の画面右上に手話通訳者の映像を丸型で合成。県聴覚障害者協会に委託し、通常日は2名、一般質問日は3名体制で対応。
AI字幕: インターネット配信および議場の傍聴席用大型モニターに、AI音声認識システム(JVCケンウッド製)によるリアルタイム字幕を同時表示。
初期費用: 計280万5,000円(字幕変換機等 242万円、傍聴席用モニター 38万5,000円)。
年間維持費: 計345万3,000円(映像制作・配信 156万2,000円、手話通訳派遣委託料 189万1,000円)。※本会議中継・配信全体の経費(約942.4万円)と合わせて年間約1,287万7,000円の予算規模。
通訳者の負担軽減: 一般質問を行う議員(現在約4割)から事前に質問原稿のデータを提供してもらい、前日までに通訳者へ共有するほか、当日の開始1時間前(9時)に入ってもらい事前学習時間を確保。
誤変換への割り切り: 滑舌や専門用語による誤変換は避けられないため、辞書登録で精度向上を図りつつも「誤変換はあるもの」と割り切り、公式記録ではなく「会議録が公開されるまでの間の一時的な補助資料」という位置づけで市民に説明・了解を得て運用。また、この理由から誤変換の許されない地上波(ケーブルテレビ)中継にはAI字幕は載せず、ネット配信にのみ注記を入れて表示。
議事運営の効率化(一般質問の持ち時間制):議員の一般質問の持ち時間は「1定例会で20分(答弁時間を除く)」。質問者が多い中でも、要点を絞った効率的な質疑応答を行うための時間管理の工夫がされている。
【人間とテクノロジーの冷静なバランス設計】
信頼性の高い「手話通訳(人間の技術)」と、コストを抑えられる「AI字幕(技術的補助)」を明確に使い分けている点が秀逸。AI字幕の誤変換に対して完璧さを求めず、運用の位置づけを「公式記録ではなく補助資料」と割り切ることで、法的な責任問題とバリアフリーの実益を両立させたルール設計は、他自治体が導入する上で現実的。
導入後に1定例会あたりのネット平均視聴者数が導入前の約1.4倍に増加しており、「市民に開かれた議会」としての成果が目に見える数字となって実証されている点も高く評価できる。
常任・特別委員会の動画中継ニーズに対しても、巨額の放送設備費を考慮して、令和8年6月議会から「委員会室の音声データのみを無料でホームページ配信する」という低コストの代替措置を即座に開始している点、財政的なバランス感覚に優れている。
【今後の課題】
手話通訳者の負担が極めて大きいため、派遣依頼の調整や、将来的な手話通訳者の育成・確保が持続可能な運用のための大きな課題。
-所感-
AI字幕はアプリ導入ができれば何とでもなりそうかと。実際ネット視聴者数が上昇しているので早急に検討すべきかとも。委員会の音声データ配信も簡単なのでこちらも実施すべき。手話通訳はかなりハードルが高い。
総括
松江・鳥取両市のユニバーサルデザインおよび時間管理への取り組みは、「効率的な議事運営(合理的な時間管理:ソフト)」と「多様な市民に寄り添う開かれた議会(多角的なユニバーサルデザイン:ハード)」という、現代の地方議会が目指すべき二つの方向性が確認できました。豊岡市議会における新システム導入や運用ルールの見直し、そして新設備(親子傍聴席など)の検討は、「稼働率の課題」や「磁気ループ、AI等の組み合わせ事例」など実用性の高い視察となりました。