2025年8月7日木曜日

会派合同管外視察イン宮城県登米市&気仙沼市

 今回の視察は議員になって初めての合同会派視察団を編成して行うことに。なかなか受け入れ先が決まらず焦りましたが何とか日取りも決まり、いざ当日。伊丹空港から仙台空港に向かう予定が、道中で警報があったカムチャッカ半島での巨大地震の影響から津波の発生による搭乗手続き停止となり、急遽花巻空港へ変更。波乱の幕開けでした。

花巻空港へ到着

■視察期間

 2025年7月30日(水)~ 8月1日(金)

視察目的

 先進的な議会改革の取り組み、及び官民連携による地域戦略について調査・研究し、本市の市政運営及び議会活動の更なる発展に資することを目的とする。

■第1日目
〇宮城県登米市「通年議会と事務事業評価について」

 9町が対等合併して誕生した登米市は、議会基本条例の下、市民に開かれた議会を目指し、先進的な議会改革に取り組んでいる。

 登米市は宮城県の北部に位置し、広大な穀倉地帯が広がる自然豊かな都市。市の面積の約6割を森林や田畑が占め、まさに「環境王国」と呼ぶにふさわしい景観。

  • 渡り鳥の楽園「伊豆沼・内沼」: ラムサール条約にも登録されている「伊豆沼・内沼」は、日本を代表する渡り鳥の飛来地。特に冬には、マガンヒシクイ、白鳥など、数万羽の鳥たちが飛来し、その一斉に飛び立つ様は圧巻の一言です。視察の挨拶にもあったように、田んぼが真っ黒になるほどの光景は、登米市の冬の風物詩。

  • コウノトリも飛来する豊かな自然: 豊岡市が野生復帰に取り組んでいるコウノトリも飛来することがあり、これは登米市の水田や湿地が、多様な生き物を育む豊かな環境である。安全・安心な「環境保全米」の生産にも力を入れており、美味しいお米「とめし」は市の特産品。

  • 長沼ボート場: 全国有数の2,000m級のボートコースがあり、国際大会も開催されるなど、水上スポーツの拠点としても知られている。

市の概要(基本データ)

登米市
人口(R7/3/31)
71,144
面積
536.12
産業別
第1次 13.8%
第2次 25.6%
第3次 57.9%
分類不能 2.7%
就業人口
 36,995人
※産業別、就業人口はR2国勢調査時
豊岡市
人口(R7/4/30)
74,506人
面積
697.55㎢
産業別
第1次 5.6%
第2次 26.6%
第3次 66.5%
分類不能 1.3%
就業人口
39,194人
※産業別、就業人口はR2国勢調査時


1. 議会改革の主な取り組み

  • 議会改革推進会議の設置: 議会基本条例の目的達成度を検証するため、各会派の代表者で構成される会議を常設。

  • 情報共有の強化: タブレット端末の導入、議会モニター制度、Facebookの活用、議会事務局の体制強化(法制担当の配置)などを推進。

  • 議会アドバイザー制度: 専門的知見を得るため、学識経験者をアドバイザーとして招聘できる制度を制定。

2. 通年議会について

【概要】 平成26年から導入。年4回の定例会を年1回とし、会期をほぼ1年間とすることで、議会の自主性・自立性を高め、常に活動できる体制を構築している。

【メリット】

  • 機動的な委員会開催: 閉会中の審査という概念がなくなり、必要に応じていつでも委員会を開催できるため、行政への監視機能が向上。

  • 計画的な議会運営: 議長権限で年単位の活動計画を立てることができ、市政の課題に継続的に対応可能。

  • 災害等への迅速な対応: 緊急時にも議会を迅速に再開し、審議や議決を行うことができる。

【デメリット・懸念点と運用】

  • 議員の負担増や地域活動への影響: 懸念されたが、実際は会議日程の調整により、大きなデメリットは感じられていない。むしろ常任委員会が活発化。

  • 一事不再議の原則: 従来の定例会に相当する「定期議会」という概念を設け、一つの定期議会で否決されても、次の定期議会で再提出できるなど、運用で柔軟に対応している。

3. 事務事業評価について

【概要】 平成30年度から本格実施。議会が主体的に行政の事務事業を評価し、決算審査の深化や政策提言に繋げることを目的とする。

【評価の流れと手法の変遷】

  1. 当初の手法: 総合計画に掲載されているソフト事業(約200事業)を対象に、常任委員会ごとに評価。しかし、「一方的な評価で職員のモチベーションを下げた」「現地調査が不十分だった」等の反省点が挙がった。

  2. 改善後の手法:

    • 調査機能の追加: 一方的な評価に陥らないよう、執行部からの説明聴取に加え、現地調査や関係者との意見交換を実施。

    • 常任委員会の裁量拡大: 評価対象事業の選定などを各委員会の判断に委ね、より専門的・長期的な視点で調査・評価できるようになった。

    • 評価時期の工夫: 評価結果が翌年度の予算編成に反映されるよう、11月頃までに市長へ提言を渡すことを目指している。

【主な質疑応答の要旨】

  • 議員間討議: 執行部への質疑に比べ、議員同士の討議はまだ発展途上。特に本会議では意見表明会になりがちで、委員会での議論をいかに深めるかが今後の課題。

  • 市民参加: 事務事業評価は原則公開されているが、市民の傍聴は少ない。以前は行政が外部評価委員会を設けていたが、議会の事務事業評価開始に伴い廃止された経緯がある。

  • 議員定数: 人口減少や地域代表の観点から、議会改革推進会議からの答申を受け、議会運営委員会で議論し、2名削減(26名→24名)を決定した。

■所感・考察

 「通年議会」は、議会の監視機能と機動性を飛躍的に高める可能性を秘めた制度である。委員会活動に重点を置き、常に活動ができる体制は、行政との緊張感を保ち、より専門的で継続的な調査を可能にする。本市においても、議会活動の更なる活性化に向け、そのメリットや導入への課題について研究する価値は高い。 また、「事務事業評価」は、決算を次年度の予算に繋げるための具体的な手法として非常に参考になる。特に、一方的な評価に終わらせず、現地調査などを通じて執行部と対話し、共に改善を目指す姿勢は重要である。職員のモチベーション低下という課題への配慮も含め、議会として政策提言能力を高めるための有効な手段となり得る。委員会の任期が2年である点も実施に大きく影響している。

■第2日目

⚪︎中尊寺


 初っ端に革靴での山登りからスタート。脚がクタクタになりました。様々なお堂が並ぶ中でも、金色堂は凄いとしか。個人的には松下村塾と並ぶかな。奥州藤原氏四代のお墓でした。地域でホント大切にされて来られたから現代まで現存したのだと思います。参道にお店を出すには100年200年は若僧なんだそう。壮大な時間の流れです。外国人観光客だらけでした。

〇宮城県気仙沼市「気仙沼地域戦略(DMO)について」

 気仙沼市は宮城県の沿岸北端に位置し、世界三大漁場の一つである三陸沖に面した日本有数の港町です。東日本大震災では甚大な被害を受けましたが、力強く復興を遂げ、新たな魅力づくりにも積極的に取り組んでいます。

  • 日本屈指の水産業: リアス式海岸が育む豊かな漁場では、カツオサンマメカジキなどが水揚げされ、その水揚げ量は全国トップクラスを誇ります。また、牡蠣やホタテの養殖も盛んで、新鮮な海の幸は気仙沼の最大の魅力です。

  • データで未来を拓く観光戦略: 震災後の復興において、観光を重要な柱と位置づけ、公民が連携したDMO(観光地域づくり法人)「気仙沼地域戦略」を設立。データに基づいた先進的なマーケティング戦略で、持続可能な観光地づくりを進めています。

  • ご当地キャラクター「ほやぼーや」: 気仙沼の食の魅力をPRする人気キャラクター。その可愛らしい姿は、市民や観光客に愛され、復興のシンボルの一つとしても活躍しています。

市の概要(基本データ)

気仙沼市
人口(R7/3/31)
57,561
面積
332.44
産業別
第1次 10.9%
第2次 31.0%
第3次 55.9%
分類不能 2.2%
就業人口
28,499人
※産業別、就業人口はR2国勢調査時
豊岡市
人口(R7/4/30)
74,506人
面積
697.55㎢
産業別
第1次 5.6%
第2次 26.6%
第3次 66.5%
分類不能 1.3%
就業人口
39,194人
※産業別、就業人口はR2国勢調査時

 東日本大震災からの復興を機に、「稼ぐ地域」を目指して設立されたDMO(観光地域づくり法人)「一般社団法人 気仙沼地域戦略」の取り組みについて調査した。ちなみに目的地までの道路が防潮堤で封鎖されており、物産館も食堂も全て休業でした。昨日の津波の影響とのこと。緊急防災体制を目の当たりにしました。

1. DMO設立の背景と目的

  • 課題認識: 震災復興で「モノ」と「カネ」は来たが、地域経済を「回す人(機能)」が不足。特に、地域全体のマーケティング機能マネジメント機能が欠けていた。

  • 目的: 行政では担うことが難しい「稼ぐ」という視点を民間の力で補い、データに基づいた戦略で持続可能な地域経済を創出する。

2. データに基づく公民連携の観光戦略

【体制】

  • 気仙沼観光推進機構: 市長、商工会議所会頭、観光協会会長など地域のトップが集う意思決定機関(ボード会)。市の観光予算は、まずこの機構で方針が議論・決定される。

  • 情報の一元化: 観光に関するプロモーションやマーケティング情報をDMOに一元化し、戦略の重複や漏れを防ぐ。

【データ戦略】

  • KPIの設定と月次管理: 「宿泊人数」「主要物販施設のレジ通過数」などを重要業績評価指標(KPI)として設定し、月次でデータを収集・分析。「経験と勘」に頼らない、客観的データに基づいた意思決定を行う。

  • クルーカード(CREW CARD): 顧客との繋がりを構築するための独自の会員カードシステム。

    • 効果: 約5.7万人の顧客データベースを構築。プッシュ通知による情報発信や、会員へのアンケートによるニーズ調査が可能に。店舗ごとの日時データも把握できる。

    • 課題: OTA(オンライントラベルエージェント)経由の宿泊客情報が得られない点や、利用が市内・近隣に偏っている点が挙げられる。

3. 人材育成への投資

  • 経営未来塾: 次世代の経営者候補を対象に、国内トップクラスの講師陣を招き、経営戦略やマーケティングを学ぶ場を提供。

  • 気仙沼まち大学構想: 「志を持ち、行動する人材」を育てるため、経営者だけでなく、自治会役員や女性、高校生など、多様な層を対象とした学びの場を創出。長期的な視点で地域を担う人材への投資を最重要課題と位置づけている。

【主な質疑応答の要旨】

  • データ活用の効果: データに基づく議論が定着するまでには5年ほどかかった。当初は事業者の「肌感覚」との対立もあったが、2週間に1度の会議などで粘り強く対話を重ねることで、共通言語としてデータが機能するようになった。

  • 組織運営の要点: 継続的な対話の「場」を持つこと。後継者育成やモチベーション維持のためには、目先の成果だけでなく、長期的な人材育成への投資が不可欠である。

■所感・考察

 気仙沼市のDMOが示す「データに基づく戦略」「稼ぐ地域」という明確なビジョンは、本市の観光戦略を考える上で極めて重要である。特に、KPIを設定しわからないものには予算をつけないという意思や、月次で成果を追うマネジメント手法は、事業の成果を可視化し、PDCAサイクルを回す上で不可欠だ。観光協会や行政、民間事業者がバラバラに動くのではなく、首長も参加する意思決定の「場」を設け、情報と戦略を一元化する体制は、強力な推進力を生む源泉となっている。 さらに、成果が出るまでに時間がかかる「人材育成」に、市が覚悟を持って投資し続けている点は特筆すべきである。地域の未来は「人」が創るという強い信念が、地域全体の活力を生み出していると感じた。


⚪︎宮城県護国神社
 あらゆるシーンのおみくじが所狭しと並んでおり、商売っ気がたっぷりで圧倒されてしまいました。道中の青葉山自体は一帯が東北大学のキャンパスとなっていて、アシスト自転車を立ち漕ぎする学生や原チャリの学生も数多く見受けられましたが、クマ出没注意とも。伊達政宗公の銅像、見損なってしまいました。


【総括】 両市に共通していたのは、現状に満足せず、常に「より良くするための仕組み」を模索し続ける姿勢でした。議会改革も地域戦略も、一度作って終わりではなく、実践と検証を繰り返しながら、より実効性の高いものへと進化させておられ、特に気仙沼DMOは以前視察に来た時よりも成果も課題も明確になっている印象でした。本市議会も、行政との健全な緊張関係を保ちつつ、時には強力なパートナーとして連携し、市民福祉の向上と持続可能なまちづくりに繋げられるよう、議員ではなく議会として一体となった具体的な行動を起こしていかなければならないと思います。

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