2024年10月8日火曜日

交通網問題対策等調査特別委員会 管外視察㏌鳥取市・伯耆町&鳥取県庁

 交通網問題対策等調査特別委員会は昨年は日帰りでしたが、担当者から話を聞くだけならオンラインでも良く、その地域に出向いて特性を見聞しながら考えることに学びが多くあると思うと委員長に話した結果、7月17日~18日にかけて1泊2日で視察に。
 責任重大です。報告書を鳥取市1カ所お任せ頂きました。

1日目:鳥取県鳥取市(7/17)

 日本一の鳥取大砂丘を有する「鳥取市」は、中国山地から日本海へ北流する千代川流域にひらけた鳥 取平野に、古く城下町として生まれ、江戸時代は、鳥取藩池田家32万石の城下町として栄えた。明治22年10月1日市制を施行し、以来県都として、また、山陰地方東部の中核都市として、政治、経済、文化の中心となり発展をしてきた。
 交通網の整備については、昭和42年の鳥取空港完成、平成6年12月の智頭線開通により首都圏や近畿圏とのアクセスが短縮された。平成25年3月には鳥取自動車道、さらに令和元年5月には鳥取西道 路が全線開通し、広域的な地域間の連携交流の活性化と雇用の拡大に取り組んでいる。
 平成16年11月1日には、鳥取県東部の6町2村との市町村合併により、山陰地方で初めて人口が 20万人を超え、さらに、平成17年10月1日には特例市となった。 平成30年4月1日の中核市移行と併せて「因幡・但馬麒麟のまち連携中枢都市圏」を形成し、 山陰東部圏域の中心市として圏域全体の発展に向け、第2期因幡・但馬麒麟のまち連携中枢都市圏ビ ジョンのもと、各自治体等との連携による取組を行っている。

鳥取市
人口(R6/8/1)
179,690人
面積
765.31㎢
産業別
第1次 4.7%
第2次 20.2%
第3次 71.1%
分類不能 4.0%
就業人口
89,928人
※産業別、就業人口はR2国勢調査時
豊岡市
人口(R4/10/1)
75,500人
面積
697.55㎢
産業別
第1次 5.6%
第2次 26.6%
第3次 66.5%
分類不能 1.3%
就業人口
39,194人
※産業別、就業人口はR2国勢調査時


・視察テーマ:地域公共交通の取り組み「とりモビ」について
【経緯】公共交通利用者が減少することによる減便や廃止が進む中、市内各地域の特性に合わせ、交通空白7地域では共助交通、北側市街地では100円バスくるりなど様々な交通モードが展開されている。南側市街地では市役所が移転した10年前より幹線道路にアクセスできる利便性の高い公共交通を模索。昨年度より路線バスとタクシーの中間のような取組の新しい移動手段、すべての人の移動格差をなくすため、ワンマイルオンデマンドの導入によりシームレスな社会交通システム構築を目指して相乗り型の社会実証実験を始めた。
【内容】ハイヤー共同組合を会長とする「とっとり共創型交通協議会」を実施主体に、国土交通省地域交通共創モデル実証プロジェクト「とっとり共創型交通プロジェクト」の一環として実施。大量輸送公共交通とのすみ分けで通勤通学時間帯を外し、8時から22時まで運行。実施エリアは南北4km東西2kmの範囲に限定し、乗降は店舗や目立つ地点をポイントに昨年度162地点から今年度は192地点へ増加。運賃は1400円。回数券と30日間サブスクも実施。車両は10人乗り2台。予約管理のAIオンデマンド乗合交通システムはWILLER株式会社が協力。AIはドライバー不足を補い、予約が入ればルート変更し最適な運行ルート指示。効率よく運行することで少ない台数でも多くのニーズに対応できる。
【成果と課題】昨年度4,326人が利用。予約は電話1割アプリ9割。朝の時間帯は通院、夕方は仕事終わりの移動利用が多い。利用年代は幅広く、当初高齢者が多いと予想したが30代から50代が半数。高齢者向けに公民館で予約アプリの使い方講座など展開中。相乗り率は16%くらいでもっと上げたい。マイカーを持っていない大学生には使い勝手が良いと好評。
【仮説】「移動の機会を増やす」ワンマイル移動など→「移動の目的を増やす」公共施設や商業施設の来客につなげまちを活性化→「移動の総量を増やす」マイカーに乗らずに暮らせるかカーシェアととりモビの連携実験
【課題】タクシー、バスとの共存と利用者の伸び悩み。地域経済活性化に向けてコラボ事業者を募集。少しでも財源獲得の取組が必要。
【今後の展望】過度のマイカー依存を脱却し、地域経済活性化につながる公共交通の利用者を増やしていく。
【所感】相乗りデマンドタクシー「とりモビ」は、まだまだ認知度が低いことやスマホアプリのため高齢者利用が低いこと、運用地域が限定されていることなど課題はある。一方で、夕方の飲食店などへの利用が多いなど地域経済活性化へプラス面もあり、利用特性を掘り下げていくことで更なる可能性が期待される。現時点ではミニマムな地域内公共交通だが、掘り起こせていない利用実態は多くあり、公共交通拡大の可能性を知ることが出来た。今後が楽しみな事業である。

 午後から移動して一路伯耆町へ。車中からは大山が見え、久々にその姿を拝んだなと思いつつ、嫁の実家には長らく顔を出していないなと合わせて反省です。ちなみに冒頭の大山の写真は伯耆町役場の議員控室からの眺望。これ以上ないというくらい特等席です。

鳥取県伯耆町
 中国地方を代表する国立公園大山や鳥取県の三大河川の一つである日野川など、雄大な自然 景観に囲まれたうるおいのある環境の中にあります。この恵まれた自然環境を観光や産業など、さまざまな面で活かすとともに、自然環境の保全や自然と調和した生活環境の創出を図っています。町内には中国横断自動車道岡山米子線が通過し、溝口インターチェンジ、大山高原スマートインターチェンジが設置されていることから山陽方面や関西方面への交通アクセスの便利な場所に位置しています。
 白鳳時代の大寺廃寺跡から発掘された石製鴟尾や小野小町の墓と伝えられる五輪塔、たたら製鉄の歴史を伝える藤屋炉床や日本最古といわれる鬼伝説など、数多くの文化財や史跡が伝えられています。また、山陰の自然を舞台に独自の技法で撮影した写真で世界的にも評価の高い写真家植田正治氏の作品を数多く所蔵展示している植田正治写真美術館は町内の重要な文化施設になっています。

伯耆町
人口(R6/8/1)
10,206人
面積
139.50㎢
産業別
第1次 16.0%
第2次 19.2%
第3次 63.9%
分類不能 0.9%
就業人口
5,469人
※産業別、就業人口はR2国勢調査時
豊岡市
人口(R4/10/1)
75,500人
面積
697.55㎢
産業別
第1次 5.6%
第2次 26.6%
第3次 66.5%
分類不能 1.3%
就業人口
39,194人
※産業別、就業人口はR2国勢調査時


・視察テーマ:地域公共交通の取組について(伯耆町型バス事業)
【経緯】JRと路線バス以外が空白地域になってしまった。H19年度から大きな見直しなく2社に委託。定期路線とタクシー事業者。一部町職員が直営で運行。
【内容】伯耆町型とは、通学手段としての①「スクールバ ス」、公共交通としての②「デマンドバス」、公共交通の利用が困難な方の移動手 段としての③「外出支援サービス」、保育及び住民団体等の活動実現手段として の④「研修バス」のこと。4つの部署のものを一元管理している。福祉部門の外出支援サービス、総務部門の研修バス。 
【成果と課題】利用者数は全体的に減少傾向にあるが、地域の足として位置付けてなんとか持続している。予算規模は1億1千万超、7千万程度交付税措置。デマンドバスが少しづつ回復している。
・スクールバス
 全て無償。デマンドバスも兼ねており、国の許認可も取り有償で運行可能。学校行事で2台まで利用可能。部活動(日帰りのみ)などの学校行事等でスクールバス運行時間外の時間に 使用が可能。スポーツ少年団やサークル等の利用は不可。
・デマンドバス
 」交通空白地域において、自家用有償運送にて各地域から最寄りの駅及び主要施設等を繋ぐ路線バスの代替え輸送手段として運行。217ヶ所のバス停。利用者数や運賃収入は減少傾向。3つの区域で運行し、どこも隔たりなく利用者がいる。どの便も予約がない便がない状況で運行。JRに繋ぐ。
・外出支援サービス
 指定難病を最近追加した。ドアtoドアで運行する自家用福祉有償運送。事前登録者のみ利用可能。通院のみの利用であり、外出支援サービスは福祉タクシーより安い。民間事業者のみ運行している福祉介護タクシーはデマンドバス利用が困難な要介護者等が利用する。福祉介護タクシーは使用目的は自由、外出支援サービスは通院のみとすみ分けている。
・研修バス
 保育所、老人クラブ、社協等が研修で出る場合、日帰りの範囲内で無償で利用できる。ガソリン代や高速代は実費。1日2台まで使用しているが運転手不足や高齢化により困難になりつつある。
【今後の展望】配車センターは運行とは別に委託契約している。デマンドバスと外出支援の予約受付は電話のみで、受付専用社員1名が常駐している。課題は利用者の多数が高齢者、電話のみの受付 乗り方や行き先がうまく伝えられない方がいる。電話が多すぎて対応できなくなる状況は生じていない。電話だけの予約受付だが、ウェブ併用できるようにいずれは検討していかなければならない。
 研修バスにとって部活動の地域移行が悩ましいところ。今のルールが学校からの依頼はOKだが、 同じ生徒でもクラブの申請はダメというルール。将来的に全部の部活が地域になると無視できない。教育委員会と話はしているが無視はできないということで止まっている。どこかの段階で判断しないといけないが、いいとも悪いとも言えない。
【所感】伯耆町型公共交通は役所の縦割りを機材と運用面で一元化した点が秀逸。研修バスは羨ましいが実質的に豊岡市では困難。ただ、スクールバスの可能性を知ることが出来たのは大きい。部活動の移動でのスクールバス利用は盲点だった。


2日目:鳥取県庁(7/18)
・視察テーマ:地域公共交通の実現に向けて
【経緯】米子・倉吉・鳥取と海岸線の市町で生活圏を形成。JR山陰本線を大動脈に、智頭・因美線、伯備線とあり、智頭急行と若桜鉄道が第3セクター。鳥取市、倉吉市、米子市から放射線状にバス路線網が展開。S41年のピーク時と比較してJR乗車人数は1/9、乗合バス乗車人数は1/13、タクシー輸送人員はH元年の1/5に。マイカーは世帯あたりの保有台数は増えてモータリゼーションが進んでいる。近年は乗合バス路線の統合やタクシー営業所撤退が進み営業所がない町村もある。
【内容】
・路線バスをわかりやすいバスへするために系統ナンバリングやピクトグラム表示。
・バスきたとっとり運用→オープンデータ化している。近くGoogleマップで移動経路の検索や時間もわかるようにする。
・誰もが移動しやすい町を目指して日本財団と共同プロジェクトを実施。
・全国に先駆けてUDタクシー200台整備し、H30国交相の大臣表彰。観光客にも好評。
・国の認定UDは横から載せるものもあるが鳥取は後ろから乗せるタイプの支援に限定している。
・市町村の公共交通支援では、いろんなところで路線バスが縮小しており、バス中心にR2年から鳥取モデルを構築。
・市町村ごとに地域にある事業者や実情が違うため、共助交通やNPO含むタクシーなど組み合わせしやすい支援制度を構築(補助率1/2)。
・タクシー事業者がある場合は、高齢者向けのタクシーチケット支援も。
・デマンドや貨客混載、AIオンデマンドも可能。R4までに21件取り組みが出てきた。
・例)旧佐治村(現鳥取市)ではNPO法人が定時運行事業。佐治地区の道路が被災し大きな道が崩れた。ハイエース迂回路や小中学生の通学を。R5年JA系スーパーが一度に撤退し、買い物に行けない方がでた。買い物環境確保に寄与。
・例)大山町ではデマンドバスを早めに入れていた。行政の支援が大きくなっていた 2000万の事業費のうち1800万が町や県の支援。5台のうち1台が空いていて、佐川急便が運送を任せるところを探していた。町営バスの空き時間を使って宅配分を届ける副業を実施。収入面は貨物収入450万、旅客収入は200万。
・ライドシェア、欧米ではウーバーがあるがそのやり方をそのまま持ってくるとタクシー事業者の仕事を奪ってしまうのではと危惧。
・事業者と協力しながら NPOや市町村、マイカーを登録するやり方をすでにやっている。
・中山間地型ライドシェアでは、ノウハウを持っているのはドライバーだけ地元。
・住民の関わってもらう事業への支援を特別に実施。
・日野自動車が共助交通の支援、人を配置して業務を新分野として売り込み。
・ホテルなどの送迎車両の活用もメニューはあるが実績はない。
・ドライバー確保が1番大事で、市町村への補助や事業者に直接補助を実施。便利に取り組んでいただくことも大事。
・交通だけで議論しても自家用車ほど使い勝手が良くない。
・JRの削減は広島岡山では話し合いが始まっているよう。みんなで大事にする必要がある。
・鳥取東部交通事業者、市町の首長で協議。
・交通モード間の連携MaaSを推進、山陰本線鳥取倉吉間にICOCAを導入。
・駅を中心とした街づくりについて、鳥取南側ではウィラーの実証実験でトリモビを実施。3キロ四方の架空バス停をたくさん持ってAIで予約し、バスよりも近い距離タクシーとの間くらい。鳥取市中心市街地では自動運転の実証実験。西部は20kmに駅が15個くらいある沿線 都市計画し、駅周辺に住宅地を呼び込んだ。米子は駅周辺規制し、駅を中心として使いやすい街づくりを実施。
・地域MaaS実証実験、同じルートをバスも鉄道も走っている若桜鉄道。倍にすることは難しいがそれぞれを共通パスにすると倍になるだろうと。実際は苦戦、R4は26人しか利用していない。
・車の利便性には勝てない。便利にしたものと啓発もないと。便利さを超えることはなかなか難しい。山陰本線鳥取倉吉にICOCAが入ってくる。バスだけのQRコードだけの実証実験も 一日800円で乗り放題。
・観光列車、鳥取から出雲を走るあめつちは鳥取から城崎温泉まで特別運行。地元沿線自治体、駅で販売やジオパークガイドも乗り込んでガイド。JRにはぜひ観光列車を走らせ続けられるようお願い。
・撮り鉄にマナー5ヶ条、ウェルカムな呼びかけを実施。反発するより地元もウエルカムとしたら評判は良かった。 
・デジタルスタンプラリー、山陰本線や播但線もエリアに。昔ながらの硬券切符がもらえるような取り組みも。
【課題】
・UDタクシーはH28から導入し8年経過して更新時期になってきている。
・ドライバー不足がいちばんの課題。バス乗務員は515人くらい必要だが393人。コロナ前に760人いたが597人に。
・2種免許の取得支援を実施し、バスドライバー就職イベントへ出店や営業所見学会も行い採用力強化。
・タクシーは70歳超える方もいる。増やすとやめてしまうのも課題。R5実績でバス28人、タクシー56人。
・予算はR5で3億ちょっと。市町村が2分の1負担で3億から4億負担している。
【今後の展望】
・交通は課題解消がなかなか難しく、県内はできることに取り組んでいる。市町村主体は間接補助。
・イコカはバスにも近く入れていき、便利になると利用してもいいかなとなるかと。
・ちょっとずつのストレスをオープンデータで解消へ。街中のバス停はきているのかまだかわからない。
・県と市は特に幹線バスに24.3億注ぎ込んでいる。幹線バスも赤字補填。事業者だけでキャッシュレスや情報のオープン化はやりにくい。便利になるように仕向け、利用者を増やしたい。

【所感】県が率先して市町村と実証実験に取り組み、とにかく新しい交通モードにどん欲にチャレンジする姿勢は素晴らしく、多くの波及効果つながっている。
出来合いのものを導入するのではなく、キチンと地域に合ったものを構築していく姿勢こそ大切だと改めて感じました。